イロームものがたり2(映画作り)

ものがたり

映画を作るって?。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

                 サザンカのむかし話が続く。。。

『高野の交差点ちょっと行ったところの喫茶店で、映画のシナリオというのを書いているイロームに「本当に映画作るの?」と聞いたらね、、、

「できるよ。」

「どんな映画?」

「あとで詳しく説明するけど、僕のようなアフリカ人が京都に住んでいてね。。彼は結局

最後には自国のカメルーンで自殺してしまうんだ。それがテーマだよ。」

「それって、ほんとうの話?」

「そうだ。実際にあったことだよ。それを聞いた時、これは、そのままにしておいてはいけないと思った。この話を元にシナリオを書いている。」

「どうして自殺したの。」

「仕事探してたけど、ダメだった。フランス語教師を募集していた関西日仏学館に面接に行ったら、彼はフランス人じゃないからダメだというのさ。同センターでフランス語教師の妻、夫婦のまわりは京都の中のフランス人社会、次第に孤立してゆき、生活がギクシャクしてくる。難しくなる。。。」

「配役はどうするの?」

「カメルーンの友人に声かけてある。もうすぐ来日するはず。」

 

。。。。。。。。撮影が始まった。。。。。。。。。。。。。。。

 

数日経って、高野にレッスンに行くと、イロームの家は大勢の人が出入りしていた。

ああ、撮影が始まったんだわ、と思った。フランス人らしい男性が大型のカメラを担いでイロームと打ち合わせしている。

横にいるのは日本人の若い男性、カメラマンのアシスタントと紹介された。台所では日本人女性が「ああ、わたしも駆り出されて手伝いよ」と米をといで忙しそうにしている。

ノートを脇にかかえ、人の間をせわしなく行き来している黒メガネの日本人女性。あとで、記録係、スクリプターというんだって、、、と教えてもらったりで、何もかも、私にはモノめづらしい光景。家中が雑然と熱気に包まれている。フランス語を話す日本人、日本語を話すフランス人。。。

明日の撮影の打ち合わせをしている。友人が自宅を提供してくれたので、そこに撮影に行くらしい。

うーん、こうなるとフランス語レッスンどころでなくなってね。わけがわからないまま、手伝いをしに行くようになったの。大きな流れに飲み込まれたようだった。これって、中学時代、ブラスバンド部に熱中した時の充実感と同じ。授業はそっちのけ、待ち遠しい放課後、向こうの校舎から響いてくるクラリナットやドラムの音に、胸が逸り練習に飛んで行ってた。

さて、ある日、今日は飲み屋で撮影する、と準備しているところだった。

スクリプターの女性が

「ねえ、ねえ、誰か飲み屋のおかみさんやってくれない?と探している。板前さんはSさんがやってくれるって。」

「あっ、そうだわ、サザンカにやってもらおう?」

「とんでもないわ、、できないです、急にそんな、、、」とにげごしの私。

台本のページをなぞって、「いいから、いいから、ここのところをやってくれたらいいわ。」

「???」

 

。。。。。。。。。。。。。。。アクション!。。。。。。。。。

「カウンターごしにお酌をしてね、アイソよく笑ってたらいいの」

ワンピースの上から、やみくもに着物をおっ被されて、おしろいはたいて、、髪を結い上げられてね。さっそくお店のカウンターに入った。Sさんがこの店の実の大将から手ほどき受けているらしい、、飲み屋のシーンは、どういうことかと、スクリプターの説明を聞く。

傷心の主人公が、ひとり酒場で飲んでいる、、という設定らしい。

バックには北島三郎の”与作”が流れる。

与作は木をきるー、ヘイヘイホー、ヘイヘイホー、

こだまはかえるよー、ヘイヘイホー、ヘイヘイホー、

 

スクリプターが「はーい」と合図

四方から強いライトあびせられ、目がくらむ。

袂をたぐって「いかがですか、、、」カウンター越しに

お銚子を差し出したところで

「ハーーイ、カット!!」

「はい、ご苦労様」

 

(続く)

 

 

 

 

 

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