2021年3月4日 ABC文字の読み書きについて

生活

文字を読むこと、書くこと

 

ヤカセメ村出身者には高等教育を受けた人が多いとひと昔まえは言われていた。教育好きと評判のあるこの地域。高い学歴を得た人たちは村にはあまり残らず都市へ向かい、中央政府の官僚職にポストを得ることが多かった。また外国に渡る人たちもいて、自分の遠い親戚がフランスにいるとか、アメリカにいる、という話はザラに聞く。

ところが最近の傾向は2、3年小学校に通ったけれど、いろいろな事情で学校はやめたというケースが多い。子たちを取り巻く事情は、これがなんとも複雑きわまりない。金銭的余裕がなく学校へ通えなかったというような簡単な話ではない。。そもそもなんで学校に行くのか? なにかよくわからないけど、親に逆らわないで、とりあえず制服着て出かけてゆく。

カラスでは、おとなや子供たちのABC文字の”読み書き講座”を開いている。

興味を持った子たちが、問い合わせにくるので、話を聞いている。

 

若者(二十歳くらい)

      小学3年の教科書

小学校に通い始めたある日、いつものように酒臭い教員が教室に入ってきて、「きょうは、だからサア、、 机に伏せてみんな寝てろー!」と一喝するなり、椅子に倒れこみ、グウグウ寝てしまった。「動くやつは、棍棒でひっぱたく!」と。

学校の校長はその教員に弱みがあるから、何も言えない。校長が女子生徒に手を出したことを教員はつかんでいるからだ。勉強は嫌いなまま、とにかく高校くらいまでは続けていた、、、

現在、この青年はABC文字で書かれた文章がまともに読めない。数の勘定や、東西南北の感覚など、村の外の社会のモノゴトがよくわかっていない。

何をしているかというと、天然ゴムの収穫シーズンになると、ゴム樹液を集めに山へ入るのだそうだ。養父と母と母の連れ子数人で暮らす。養父の畑仕事を手伝ったり、実父の畑作業を手伝ったり、養父の別の妻の畑の収穫物を市場に出したりと、忙しくしている。暇な時はゲームセンターにきている。

 

女の子(17才)

うん!学校は高校2年まで通っていた。次の進級テストで2回ダメだった。それで親が、学校なんかやめてしまえ、婿を取れというので学校やめた。ところが親が連れてきた予定婿の男が、婚礼の準備ができていない。ということで この件スタンバイになっている。

『じゃ、今何してるの?』

『ゆで卵を売って歩いてる。』

『何をしたい?』

『わからない。』

『何するのが好き?』

『わからないわ。』

              『この本読んでみてごらん。』

『******???』

(ちんもく。本を睨んでいる)

美少女。おしゃれで、爪に銀色の小さな星マークを貼っている。ニコニコして、感じのいい女の子。最初ハキハキと受け答えていたが、学校の勉強の話になると、緊張して表情が固まってしまった。母親がこの子に何か身につけさせたいからと、私たちのところに連れてきたのだけれど。

 

女の子(14才)

農村で生まれた。少し離れた村に住む父方の叔母に預けられ、そこから小学校に通っていた。最近、親元に戻ってきて、村の中学校に入った。73人の生徒が、ぎゅうぎゅうに詰まった教室。彼女はクラスで一番だ、と父親は自慢げに言うが。。。

この子のノートを見せてもらった。先生が黒板に書いたものを、自分で写したはずなのに、なかなか読めない。単語のつづりも間違いが多い。

『学校の教科では何が好き?』

『はい、おんがくが好きです』

『おんがくって何?』

『はい、耳が快いと感ずる音を演奏することを学ぶのがおんがくです。』

(先生が黒板書いたであろう内容を暗記して答えてる?)

『クラスで歌うことある?』

『いいえ、ありません。』

『何か楽器は?』

『はい、先生がフルートを買ってこいと。』

この子の妹たち(10才、9才)は小学3年。やはり教科書が読めない。

 

 

青年(22歳)

この青年はカーキ色のユニフォーム姿で現れた。高校生かな?

何がしたいのと尋ねたら、映像関係の仕事したいから、カラスで学びたいという。今までに作った作品を見せてくれた。全て自力でやったという。映像にミュージックつけて、歌手のDVDクリップなど作っている。政策資金出してくれる人物がいた。仲間集めてクリップ300枚作り、全部売れた。でも僕の取り分は少しだけ。編集から全て自分でやったんだけれど。。

でも、両親は僕にデイプロマ取って、公務員になってほしいと思っている。今まで学校にまともに行ってないので、字があまり読めない。中学からやり直しだ。でも、歳をとりすぎている。役所でウソ年齢の出生証明を発行してもらった。

結局この子はピチピチの制服に身を無理やり押し込め、中学校に通うようになった。

空いた時間見つけてカラスにきたら?と提案したけれど、両親のめんどうを一人で背負っているらしく、余裕がなさそうだった。映像作家への夢はどうなったのだろうか。

 

先生も生徒も嬉しくない学校制度

 

一概に子供たちは、学ぶことの楽しさを知らない。一方、学校の教員たちは、雇用条件(金銭的な手当)が悪く、しょっちゅうストライキを起こしている。教えることの使命感や楽しさが持てない。

現在隣の村の学校で事件が起こり、学校は閉鎖されている。教師に諭された生徒が「切れ」て、教師に暴力を振るった。これを受け教師が生徒を殴った。ところが、規律では生徒に手を出してはならないことになっている。学校側は教師に非があるとする。これに憤慨した同僚の教師たちが、ストライキを起こしている。親が子へ期待することは、『学校行かせて証書をもらい仕事を得たら親を助ける。』

    小学5年の教科書

学歴があっても実力がない。証明書を持ってきても無能な若者の何と多いことか。そもそも仕事がない。大学出ても失業、『デイプロマさえあれば社会で成功する』という昔の信念は現実とは程遠い。

 

 

この本読んでごらん、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

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